円筒印章。 > kuu
「中近東における美」の最後の講座は円筒印章についてでした。古代メソポタミア、ウルク文化期後期(紀元前3200年頃?)に現れたハンコです。硬い円筒形の石材などの周囲に細かい図柄が刻まれていて、粘土の上に転がして図柄を写すのです。言葉の説明の限界…。Google先生に見せていただきましょう。こちら。
おもに扉や壷や袋を封印する封泥や契約に使われたようですが、人々は紐を通して護符・アクセサリーとしても持ち歩いたそうです。
小さな円筒印章は紛失することが当然あって、悪用する人もいました。紀元前2000年頃になってからは、他人が悪用することを防ぐために、印章を紛失すると街路で角笛を吹き鳴らして告知されることがあったそうです。また紛失した際には届出をし、紛失した日時を正確に記録したそうです。
円筒印章の歴史から他人を信用しない文明のルーツをたどった気がします。四方から外敵が攻めてくる可能性のある開けた地形だと、民族の出入りが激しくて疑心暗鬼になりやすいのですね。日本は海に守られた国だったのに、なぜか世界で唯一、ハンコ文化が残りました。
他の国ではハンコはすたれて現代ではサイン中心です。
円筒印章は泥の上で転がすと連続した図柄を刻むことができますが、紙の上で使うには向きません。朱肉やインクを付けなければ紙に図柄は転写されませんし、付けたとしてもインクが切れれば図柄も切れてしまいますから。パピルスや羊皮紙が広まっていく過程で円筒印章は次第に使われなくなりました。
円筒印章に使われた図柄はたくさんありまして、今回の講座のメインはいろいろな図柄を見ることでした。
王族、神殿への行進、神、女神、家畜、怪人、怪獣、捕虜、戦い、祝宴、聖婚(交合)、動物闘争、くさび型文字などなど。動物闘争図には闘争というより交わっているような雰囲気をかもし出すものも見られ、妖しいパワーを感じました。たいてい、どの図柄も子供が見たら怖いような絵です。
護符、アクセサリーという使われ方はもちろんのこと、封印する、契約するといった行為にも、呪術的な願いを込めたのでしょう。
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