以前、「撮影方法(手ぶれ防止について)」 《別窓表示》をアップした折に、次は「シャッターチャンス」を書きたいと言ったような覚えが。。。閏年でもあるし、まとめてみました。
「写真は被写体のあるがままを捉え。生命の瞬間を写し撮る。」by kaze777
私が眉目秀麗な青年であり、ベトナム戦争が終焉の兆しを見せていた頃、写真に興味を持ったのです。
バイクは14才の春に目覚め、最初は屑屋で分けてもらった山口オートペット、2台目はC110本田スポーツカブ、3台目がCL72。
やり始めると徹底的に熱中する性癖があり、16、7の頃には駐留軍の米兵たちとつるんで走り回ってました。
そんなもんで高校は4年いったけど。あんまし通った記憶がない。気が向いて顔だすと教員が困るので遠慮しました。
ベースのヤンキーのバイク乗りも写真好きが結構いました。立川も横田も空軍のベースです。空軍将校達はメカ大好きが多くて、本格的なフォトクラブがありました。
偶然・・・環境が良かったんです。バイクもですがカメラも前線に赴任になると愛機をくれるんです。泥沼のベトナムの地獄に行くんだし、形見分けみたいなもんなんだ。
ノートンコマンドに跨って、ローライシックスやらハッセルでパチリパチリやってました。
やってみたら奥が深くて見えない。。。それでバイク仲間のプロカメラマン達に手ほどきを受けました。彼らは面白がって付き合ってくれました。
あの頃は3時間くらいしか寝てなかった。
おかげさまで撮影の基礎をしっかり体で覚えさせていただきました。
前置きは終わりにして本題に入ります。
大白鳥が水面から飛び立ち、水滴が足元よりツツツーと垂れ、大きく羽ばたいた翼から風の色や匂いを感じた瞬間。
ピッチャーが豪球を投げる。変化球の指使いから球が離れ、歯をくいしばりバッターボックスを睨みつけた眼、日焼けした顔。
バッターがホームランを打つ。バットに餅のように硬球がひしゃげてへばりつき、バットを振りきり打った球が宙を飛び、バッターの目が行き先を追う。
向かってくる列車の運転手の真剣な眼や口もと。運転台での息抜きに菓子パンをほお張る。
街角で突風に煽られたスカート、飛んでいくカツラ。
カメラマンの眼は見てはいるのです。でも撮れなかった「ジャストミート」は例をあげればきりがありません。悔しくて悔しくて夢に見ます。
いつか撮ってやろうと思うはずです。だけど思っているだけではいつまで待ってもチャンスはものにできません。修行するしかないのです。
霊山に篭って死に装束で凍るような冷たい滝に打たれ、燃え盛る焚き火に身を投じ法螺貝を吹き鳴らす必要はありません。
ヒマをみつけて部屋で10分間ほど集中すればいいのです。
フィルム時代にはモータードライブなんてのもありました。100フィートのフィルムがあれよあれと無くなる。新聞社のスポーツ関係が主に使ってました。
今でも芸能人や政治家のナントカなどをTVで観ているとモードラの音が聞こえてくることがあります。「ジャーーー」やかましいやつです。
デジイチの時代になって秒/3コマとか秒/5コマとか、最近では秒/60コマ。連射機能が付いています。
こういうのは「イチカバチカ」の運でございまして・・・。ついていれば撮れることもあります。だけど人生で何度も来ない「幸運」を写真で使い果たしてしまうのも問題です。運や機材にまかせていては写真は上手くなりません。
ジイ~~~と構えて、千載一遇や一期一会を一発で決めればいいのです。
決まれば、そりゃ~気持ちがいいです。世の中が薔薇色になります。買うか買わざるか悩んでいた高価なレンズを買ってしまったりします。
こういう説明は本来、図を用いてすべきだと思いますが本説では行いません。文章をよく読み、頭の中で想像していただきたい。
少なくとも3遍は読み返さないとわからない。極意書なんてのは、そういうものであろうかと思います。
◆用意するもの
凧糸 5円玉 ロウソク 三脚 カメラ
◆修行方法
椅子に座って三脚を前に置きます。
カメラより1メートルほどの距離に天井から5円玉をぶら下げます。
5円玉から60センチほどの場所に灯したロウソクを置きます。
ファインダーを覗いて5円玉の穴越しにロウソクの炎が見えるように机に本を積むなりして高さを調整します。
糸のよじれが止まったら、なにかで突っついて5円玉を左右に揺らします。前後は上級コースです。
まだよまだだよ。まだカメラには触らない。両目でよ~~~く観ます。
左右に揺らした5円玉はクルクル回りながら振れます。
よ~~~く観察してください。5円玉の穴がこっちを向いたときに炎を撮るのです。
目で見えます。その瞬間が。
振りが収まったら、またツンツン…ブラブラを繰り返します。
よ~~~く観て、穴の向こうに揺れる炎が見えるようになってから、カメラを構えてください。
ファインダーを覗いたら、きっと感じるでしょう。「これは飛んでもない修練なのだ」と。だから修業ではなく修行なのです。
やり始めの頃はメモリーカードはいりません。10分やって3枚は撮れたかなあ?と感じられるようになってからで良いでしょう。
シャッターは右手の人差し指の腹で、やさしく押します。
爪を立てたり、叩いてはいけません。ゆっくりゆっく~り押してみてください。
よく言われる言葉ですが「ゆで卵を握るが如く」ハードボイルドじゃないですよお。半熟の卵。手全体で半熟の卵を握るようにシャッターを切るのです。
半押しでAFが効いてピントが決まったら、シャッターが切れるところをちゃんと確認してください。何回も何回もシャッターを押してみて、どこで切れるのか指に覚えさせてください。
プロカメラマンはヒマがあればカシャカシャやってます。あのカシャカシャはこれです。
手持ち縦位置で撮るときに親指でシャッターボタンを押す人を見かけます。親指は重いものを持ったり、力をかけたりする指で、ほかの指よりも太く短くできています。細かい操作をするのには向いていません。
しっかりした三脚にカメラを固定していても左手でカメラを保持するようにしましょう。カメラは両手で扱う道具です。
よく三脚の足を握り締めているのを見かけます。あれは三脚を揺すっているだけ。逆効果になります。気を付けてください。
半押しのままファインダーを覗いて穴の向こうに炎が見えるのを待つ。見えてからじゃあ撮れません。ちょいと前に押さねば撮れません。
眼で見て、脳に伝わり、脳が判断してから指に動けと命令を出す。命令を受けた指が動く。鍛錬するほど早くなります。
5円玉の動きを予測して、ちょいと前に押してタイミングを合わす。。。こちらは予知能力の鍛錬です。せいぜい1/10秒か100/1秒ほどでしょうが予知には違いない。
これやるとクルマに乗っていてもブレーキ踏むのが早くなります。駅前なんぞ気をつけてないとバスに追突されそうになったりします。
峠道は早めにハンドルを切るようになるので同乗者が酔ったりします。
おんもで婦人誌のモデルさんを撮るプロは、ピラピラのズボン穿いたり、半ズボンに裸足とか各自工夫して体全体で風を捉えます。
フワーーっと風が吹いてきて髪が揺れてからでは撮れないからです。揺れる前にシャッターを切らねば写せんのです。
ついでに一言。いい機会ですので覚えておいてください。
ファインダーは利き目で覗きます。手を伸ばし人差し指を立て両目で見つめます。そのまま目の前まで引いて。ウインクをします。
両目で見た時と同じようにみえるほうが利き目です。右利きはたいがい右目なんですが、たま~に違うこともあるので確かめてください。
ほいで、とっても大事な事があるんです。もう片っぽの目。たいがい覗くとつぶっちゃうものなのです。
写真を撮るときは絶対に!両目をしっかり開けて!しっかりと見てください。これも修練です。
片目を閉じると情報は半減します。遠近感も無くなります。したがって危険がいっぱいになります。
かつて目の前で清水の舞台から落ちた人もいました。猿沢の池に落ちた知人もおります。
二月堂のお水取りは何回か撮りにいきましたが、毎回3回ほど、カメラマンが滑ったり転んだりで救急車がやってきます。舞台の手前に急な階段がありまして、その裏に山の水を落とす石でできた溝があるのです。階段からだと腰くらいの高さなんですが、中の深さは1メートルはある。
中はヌルヌルスベスベ幅は60センチくらいかな。明るいうちからウロウロしてたりしてれば知ってるんですが、暗くなってから来た人が溝のへりに乗るんです。
漆黒の闇ですし片目閉じてファインダー覗けば、そらあ落ちますわな。何人も乗ってますので上のほうで滑ればアチャー。運悪く下敷きになればピーポォピーポォ。
ファインダーを覗くと、おまけに口も開いてしもおたり。ため息つきつつ、ハァーハァーは誤解の元になりまする。。。
ちゃんと口元をキリリと閉じて、鼻で静かに息をするようにしましょう。
シャッターを切るときに息を止める癖のあるかたは、これを機会にやめてください。息苦しくなってブレル元になるだけです。
息を止めても心臓は動いているのです。静かに息を鼻でしながら集中できるようにしましょう。
●高価なカメラを用意する必要はありません。安い中古で充分です。
私が修行したのは30年ほど前の話です。ペンタックスのSPFの中古を2台つぶし、横走りのゴム引き布シャッターを5回交換しました。
数えてはないけど5万シャッターくらいは切ったのかな。からシャッターのみで、フィルムは使いませんでした。
一眼レフはシャッターが作動してる間はミラーが跳ね上がるのでファインダーは真っ暗になります。
修練を続けていくうちに撮れたか撮れなかったが感覚でわかるようになります。
たいがい撮れません。初めのうちは、たま~に撮れたかな?程度のものです。
●レンズは最も安価な50mmあたりの単焦点。被写界深度も明るさもありますので修練には最適です。
●三脚はしっかりしたものをお勧めします。持って歩くわけではないので重くてかまいません。
熱中すると体重をかけてしまったりしますのでガタガタになります。高価なカーボンファイバー製などは軽すぎるのでおすすめしません。
●ローソクはスーパーやコンビニで買えます。15分ほど燃えてくればいいのです。
ファインダーを覗いて全神経を集中なんて、せいぜい5分か10分です。
よくカメラマンが集まる撮影場所で30分以上も構えている人を見かけますが、無駄な努力です。
旨い珈琲でも楽んで神経を休ませて、やり直したほうが良い結果が生まれるでしょう。
●凧糸は5円玉を天井から吊るのに使います。焼き豚こさえる時に使うくらいので充分です。
★初級コースはこんなものです。できうるならば毎日続けてください。日に一回でいいのです。
やりはじめの頃は何時間もやりがちですが、眼が変になるだけです。眼を疲れさせてはいけません。
疲れを貯めると、穴の向こうに…亡くなったかたの笑顔が見えたり、猫にしか見えない世界が見えてきたりしかねません。
そんなことになってしまうと大変ですので。10分やったら30分か1時間ほど、美味しい珈琲を楽しみながら、よ~く休んで緊張をほぐしてからトライしてください。
半年も修行しますと、カメラを構えてファインダーを覗いた瞬間にカメラマンのスイッチが入るようになります。
上手になったぶん余裕ができ、構図や色配分に配慮できるようになるはずです。
10分間で5枚は楽々撮れるようになったら、中級コースに進みましょう。続編はそのうち書きます。
おまけ。
家族のあるかたは「写真術の修行」をすることを丁寧に話してください。
ドアをいきなり開けたら・・・お父さんがロウソク点けて、真っ赤な顔して変なことしてた。おかしな宗教に嵌ったらしい。。。とか。
前から変だと思ってたけど。こんなこと始めるせがれに育ってしも~た。。。とか誤解を受けます。
最近のコメント